くらり、と世界が回るような錯覚に、わたしは思わず目を閉じ、窓枠をつかんで身体を支えました。


「確かに、返してもらった。じゃあ、な。」


また、月の夜に、と言う彼の声をわたしは確かに聞いた筈でした。



しかし、次に目を開けた時。



そこには、ただ。



月がぽかりと。




浮かんでいるばかりでした。