夜 話 

あいつの名前は…そうだな、ゲン、と。


それだけにしておこう。


あいつは名前も含めて、自分の存在をこちらの世界にさらす事をこの上なく嫌がっているからな。


ゲンは、月の世界にある玄冬の星の守り人をやっている。


その地に立つ塔の上でゲンはいつもそこに集ってくる星達と語り、世話を焼き。

産まれたての星達と。


永き年を経た星達と。


共に時を過ごす日々を過ごしている。


奴がこの仕事に就いたのは、星達の輝きに魅せられたからと、もうひとつ。


長い付き合いの俺でさえ、話のついでにほんの片鱗を聞いた事があるだけ、という理由があったんだ。