夜  話  

皎は小さく笑うと、わたしの手からマグカップを受け取り大きく息を吸い込んで、その黒真珠のような瞳を閉じました。


「………あぁ。本当に良い薫りだ。あいつが喜びそうな……。」


そう呟くと、皎は何かを思いついたように瞳を開けてわたしを見ました。


「この薫りを届けたい奴がいる。……少し届けてやっても良いだろうか?」


彼がわたしにそんな風に何かを頼むことなんて、非常に珍しい事です。


わたしは内心少し驚きながらも、頷いて答えました。


「ええ。どうぞ………でも誰に?」