夜  話  

「だぁれ?」


あどけなさの残る声で俺に話し掛けて来たのは、俺が背にしていた建物の窓から身を乗り出すようにして外を覗いていた、ひとりの少女だった。


驚いたように目を丸くし、両手で頬を押さえ、桜色の唇を開いて、彼女はもう一度俺に尋ねた。


「ねぇ。あなた、だぁれ?」


月の使いが見える人間は、それほど多くない。


特に、素朴な生活を忘れた大国の都市に住む人間ではなかなか出会えることはない。


だから俺は油断していたんだ。


姿を現わしたまま翔んでいても大丈夫だと思って。