夜  話  

だから、とわたしは続けました。


「教えて。貴方が何者か。どうして、困るのか。」


それを聞くと、彼は眉を寄せ、しばらく考えるように黙りこみました。


わたしたちの間には、沈黙が降り注ぎ、積もりあがっているような心象でした。


どこからか、吹き上がって来た夜風が、彼の髪を乱して通り過ぎ、わたしの手のひらに、薄桃色の小さな花びらを舞い込ませました。


「あっ…!」


その小さな夜風の贈り物に、わたしが声を上げると、彼は深想の淵から戻って来たような瞳をわたしに向けました。