吹きすぎて行ってしまった風を追うように、わたしは窓辺へ歩み寄りました。


舞う風が目に見えるわけでもありません。


けれど、急ぐように形を変えながら流れていく群雲に駆けていく皎が重なるような気がして。


わたしはその雲が空の彼方に消えてしまうまで、ずっと。


ずっと。



見送っていたのでした。



『俺の中に優しさを見いだそうとしてくれる、おまえの気持ちが嬉しいと思った』と。


言って姿を消した皎の照れた顔を思い出しては幸せな気持ちに浸りながら。


そうして、そんなわたしを。


月は変わらずに豊かな光を投げ掛けながらゆったりと照らし。


涼やかな虫の音が包み込んでくれていたのでした。


     夜長月 了