夜  話  

「……………いや。変わりはないか?」


小さくかぶりをふると、皎はわたしにそう尋ねてくれました。


「あ……うん。暑さでね。少しだけバテたかな。でも、もう大丈夫。夜になって少し涼しくなったから、平気よ。」


そう答えたわたしの額を、皎は白磁でできているかのような指でつん、とつつきました。


「ばぁか。夜になったから、涼しくなったんじゃない。お前はまた月の光を取り込んでしまってて。しかも、あろうことか自分の身体をめぐらせていたんだ。」


そのせいで身体が冷えたんだよ、と形良く整っている柳眉を寄せてしかめっ面をして見せながら、皎が言います。