夜  話  

やがて。


ほんの少し色を濃くした東の空から。


まるい、大きな月がゆっくりとその姿を見せはじめました。


今夜の月は、なんだかいつもより少し白に近い白銀色に見えます。


そうして。


ようやくあらわれた月の光に照らされて。


水に戻された魚のごとく。


わたしはようやく、まともに息をすることが出来るようになったような気持ちになるのでした。


「ほぅ。」


体内に重く残る、暑さに染められたこごりのようなものを吐き出すように深く息をつくと、月の光はそれをすずやかに染め変えてくれるような気がして。


わたしは何度も。


深呼吸を繰り返すのでした。