夜  話  

「いいえ。………大丈夫。」


次から次へと流れ落ちる涙が、その言葉を裏切っている事は十二分に理解ってはいましたが、わたしはそんな風に皎に伝えました。


「そう………か?」


わたしの言葉を鵜呑みにして信じてくれたわけではないのでしょうが、そこに流れるわたしの想いを感じ取ってくれたのか、皎はわたしの髪に絡ませていた自分の指をそっと外して言いました。


「お前がそう言うのならば。」


その言葉を囁き。


涙の止まらないわたしの瞼に小さく口付けると、さや、と流れた涼風と共に。


皎の姿はまた。


見えなくなっていたのでした。