夜  話  

「いいえ。
………いいえ。」


何に対しての答えなのかも明確でないまま、わたしは否定の言葉を繰り返しました。


あの人は。


わたしが憧れ続けていた、あの人は。


全てを託して。


そうして去っていってしまったのだと。


つまりはそういう事なのだという事を。


わたしは思い知ることになったのでした。


「お前の涙の為に、俺は必要か?」


優しくわたしの頭を撫でてくれながら、皎はわたしにそう尋ねてくれます。


わたしはそれに、首を振って答えました。