ポケットの恋

「どうだろう。古谷も時々ここ来てたのかな」
「一緒に来たことないんですか?」
「あー…来たことないな。一緒には」
幸日がまだちらちらと古谷を見ているのと、いつ古谷にみつかるかが気が気ではなくて、南部は早口に答えた。
「そうなんだ…」
「何か気になるの?」
嫌な感じにならないように、精一杯努めたつもりだ。
くそ、余裕なさすぎるだろ、俺。
「へ!?あっごめんなさい!真実ちゃんのこと気になっちゃって!」
「え…秋田さんの方?」
気になっているのが古谷ではないのに安心して、危ない質問が口を滑った。
あれじゃあ古谷を気にしているのかと疑っていたのがわかってしまう。
「はい」
幸日は南部の発言には深く突っ込まなかった。
頷いて、また店内を見る。南部も、ホッとしたまま、つられて店内を見てしまう。
今最も会いたくない人間と、ばっちり目が合った。
古谷がにやりと妖しく笑う。
「幸日ちゃん…いこう」
とりあえず古谷の邪魔だけは避けたい。
後先考えていられず、幸日の細い手首を掴んで歩き出した。
「え!?あっ…はいっ!」
手を引かれながら、慌てて幸日がついて来る。