ポケットの恋




真実の母が起きる頃になって、真実はやっと泣き止んだ。
ごめん、と罰が悪そうに謝る真実に、古谷は苦笑しながら首を振る。
我慢した涙は、これくらいではないはずだ。
「俺もう帰るね。秋田はお母さんとこいっといで」
「…うん」
真実は小さく頷いてから、上目で古谷を窺った。
「本当にあたし、邪魔じゃなかった?」
――その表情は反則だろう。
「当たり前でしょうが」
茶化すように言うのが精一杯で、ごまかすように思い切り頭を撫でた。
真実が反抗してくるのを適当にあしらいながら、ふと思いつく。
「秋田、ケータイ貸して?」
「え…」
「いいから」
半ば強引にその手から携帯を奪うと、手早く操作する。
「何してんの…」
「んー?」
言いながら操作が終わった。
はいよと手渡すと、真実が不審感も露わに携帯を眺め回す。
「俺のアドレス入れといた。また泣きたくなったりとかさ、したら連絡してよ。前みたいに頼りたくなったら頼って」
妙に歯切れが悪くなってしまったのはこんなセリフをはいている自分が恥ずかしくなったからで。
「じゃあね」
真実が口を開くのを視界の端に映しながら踵を返した。