ポケットの恋

はっとして、南部は手を止めた。手でブラウスの前を掻き合わせて、幸日が上半身を起こす。
「その人、雅也君だから…」
一瞬、記憶が混乱した。
原田雅也は幸日の友達のはずだ。
男に視線を移すと、口が切れて顔が少し腫れていたが、ほとんど手で庇っていたからだろう。
すぐに記憶のなかの原田雅也と一致した。
なんでこいつが。
合意の上なわけはない。
唖然として、原田を抑える手が弱くなると、途端に飛び上がって、南部の頬を殴った。
「やめて!!」
幸日が悲鳴のような声を上げる。所詮大した力ではない。
続けて殴りかかろうとする腕を掴んだ。
原田がひっと息を飲む。
その腕を捻り上げて、もう片方の腕も掴み上げる。
まとめた腕を、原田自身が用意していたビニール紐で拘束した。