ポケットの恋

男だ、と肩の上からのびた腕で見当をつける。
でも南部でも古谷でもない。
そう思った瞬間、一気にパニックになった。
―怖い。
男の息遣いが耳元で響く。
それが馬鹿みたいに生々しくて、リアルで。
男のもう片方の腕に髪を引っ張られた。
勢いよく、頭が後ろにのけ反る。倒れかかったのを支えるように抱き込まれた。
今更抵抗しようとした体は、面白い位に動かない。
抗うことも許さない力で、そのまま俯せに押し倒される。
上から重くのしかかってくる男の体と自分の体が、ぴたりと合わさった。
そうしてゆっくりと、髪の毛を掴んでいた手が、頭を這い出す。
撫でられているのだとは思え無かった。
さっきよりも気持ちの悪い衝動に、肌が粟立つ。
耳の近くで、小さな笑い声がする。
「ゆーきひ」
思わず体を起こし掛けた。
敏感に反応する男の腕が、素早く頭を押さえつける。
地面に顔を押し付けられて、喉の奥で呻く。
でも、この声は
「ま…」
強い力で仰向けにさせられる。
男の顔が、目の前で笑った。
予想していた男だ。
そしてその予想は、できれば外れて欲しかったのに。