ポケットの恋


手筈通り、幸日は正面の入口に立っていた。
古谷の姿を見つけると、嬉しいそうな顔で走り寄ってきた。
そうしながら、古谷が息をきらせていることに気づいたらしい。
「よし君…?どうしたの、走って来なくてもよかったよ?」
心配そうに顔を覗き込む幸日の手を、古谷はしっかりと掴んだ。
「戸田、よく聞いて」
「え?」
「秋田のお母さんが昔から入院してたの知ってた?」
「えっと…うん。だから真実ちゃんバイト一杯してて…」
いいながら、だんだん幸日の顔がくもっていく。
「お母さんの容態が悪くなったみたいだ。かなり危険らしい」
幸日が目を見開いた。
「今…真実ちゃんは?」
「病院」
険しい表情のまま答えると、幸日は言葉を咀嚼するように何度も小さく頷いた。
「よし君。真実ちゃんに会いに行こう。助けになれるなんて思わないけど、でも」
「行こう」
幸日が全てを言う前に、古谷は声を上げた。