ポケットの恋

「講義室まで送ってくって言ったらその、南部さんの馬鹿って」
「…もっと前から説明して」
「いや、これ以上前はない!普通に大学まで一緒にきて、それですぐにあの展開に…」
南部がなぜか力強くそう言う。
古谷は困惑顔でこめかみを押さえた。
「まぁ…聞いたところおかしなとこはないけど…」
「だろ!?どこも不審じゃないだろ!?」
「それで?その後は?」
「っと…取りあえず、なんかした?って言ったら、ずるいです、って」
古谷が頷いて先を促す。
「で、え?だかなんだか聞いたら、なんでもないです、って言われて…結局笑ってた」
南部はそこでわしゃわしゃと頭をかいた。
「あ゛ー…まじわかんねぇ…」
食べ終わった皿の載るトレーを避けて、机に突っ伏す。
やがて上の方でふっと笑う気配がした。
「…何」
ぶすっとした声を自覚しながら体を起こす。
見ると、古谷が口にこぶしを当てて笑っていた。
「何」
もう一度尋ねても古谷は笑うばかりだ。
しばらく様子を見ていたが何も変わる様子はない。
「なんだおまえ!」
ついに声を荒げた。
「ごめんごめん」
ようやく古谷が笑い声を収める。