ポケットの恋

「どこ行くの」
マンションのエントランスで、古谷は真実の手首を掴んだ。
たった今一人で歩きだそうとしていた真実が忌ま忌まし気に立ち止まる。
「家に決まってんでしょ」
「なら送るって」
古谷は、頑なな背中を見下ろして言った。
「いい。いらない」
「なんで。危ないじゃん。送るって」
「いいって言ってんでしょ!」
「何怒ってんの?あいつらのこと?」
真実が目に見えて固まった。
だがすぐに振り返って、古谷を鋭い目で睨む。
「なんのこと?怒ってるとかどうでもいいから早く離して!」
「俺はよくない。あいつらの言ったことなら気にしても無駄だし、俺だってたまたまあっただけで、もう友達とか思ってなかったし」一瞬、真実の顔が泣きそうなように怯んで、すぐにさらに怒ったように戻った。
「無駄ってなに!?べつにあんたの言い訳とか聞きたくないし、あいつらとどんな関係なのかとか興味ない!あんたとこれ以上話したくもない!関わって来ないでよ!」