ポケットの恋



「………裏の裏をかかれた…」
カフェの裏口で待ち受けていた古谷を見て、真実は疲れ切ったように呟いた。
「一緒に帰るよね?」
満面の笑みで言われて渋い顔になる。答えずに歩き出すと何も言わずについてきた。
お互い何も言わずに歩く。
真実の家に近い神社まで来た所で、「そういえば…」と古谷が口を開いた。
先に来る話を予想して、真実は固くなる。
それを見て古谷が自嘲するように笑ったのを、真実は見逃した。
「…そういえば、南部と戸田、ちょっとずつだけどまたメール送り合うようになったってさ」
よかったね、小さく続いた言葉に真実の体が弛緩する。
「そうだね」
絞りだすように返事をした。
「明日バイト?」
真実の様子をみたせいか、古谷はころりと話題を変えた。
真実は一瞬ほっとしたような顔をして、そしてすぐに表情を苦くする。
「なんで」
「なんでって…秋田いるなら明日も行こうかなって。明日入ってないの?」
「入ってない」
しぼりだした声は、やはり先程と変わらなかった。
「用事?」
「別に」
あぁ。と、真実は内心ため息をつく。
どうして肝心なところで上手く嘘がつけないんだろう。どうでもいい嘘は、普段からぽんぽん出てくるのに。
真実の心情に気づいたから気づかなかったか、古谷は変わらずにそうと頷いただけだった。
「じゃあいいや。まぁ…俺もいつもそんな暇なわけじゃないしね」「え…」
溜め息混じりに古谷が言う。
その声のトーンは、この間真実が見てしまった、古谷のバイト先での女の子達に対するそれだった。