退院の日。
本当はもう少し伸びたらよかったのに、なんて少し思う。
毎日、彼女に会えるきっかけがなくなる。
そんなことを思いながら荷造りをしていた。
「垣内さん?」
振り返ると、背の高い男の人が俺を見て会釈をした。
わけがわからないままぺこりと頭を下げると、男性は嬉しそうに笑った。
「お元気になられてよかったです」
そう切り出したのは、俺をあの事故のときに病院に搬送してくれた救急隊の人だった。
そして、ばたばたしていて、やっと渡せます。
といって俺の手においてくれた・・・・
「指輪?」
眉をしかめて男性を見つめると、男性はその指輪を見つめながら頭をひとつ振った。
「えぇ。確かに垣内さんのものだと思います。すごく印象的でしたから」
そう言ってあの時の状況を説明してくれたんだ。

