クリスマスを過ぎれば、すぐ正月がやってくる。


かほの実家は、昔の風習を重んじる、古風な家だった。


毎年30、31日は手作りのおせち料理を作る。

そして元旦には家族全員が集まる…


それがしきたりだった。



いくらよしきが休みでも、子供達も冬休みで家にいる。

よしきとゆっくり会う時間など殆どない。



離婚したとはいえ、子供を引き取っていた為

今までと何ら状況は変わらなかった。



《結局よしきを一人ぼっちにさせちゃうなぁ…》



かほは申し訳ない気持ちで一杯で

いつも自分を責めては負の念を抱いていた。



幸いよしきは出張で、年末年始も仕事だと言った。


かほは内心ホッとした。

どっちみち会えないことに変わりないのなら

仕事をしていてくれた方が気が楽だった。



よしきは29日の晩に

『今から行ってくるよ。

山奥に入っちゃうから、電波通じないかもしれないけど…

できるだけ連絡するからね!』


とかほにメールをすると

車で三時間位かかる山奥まで仕事に出掛けた。




この時かほは何の疑問も抱いていなかった。


本当に出張だと信じていた。