かほはふと物足りなさを感じていた。
勿論さっき言ったことに嘘はない。
よしきの為に離婚したわけではなく、自分がその道を選んだのだ。
けれども、もっと喜んで欲しかった。
「やっとかほちゃんは俺だけのものになるね」
…そんな言葉をかほは期待していた。
「あんまり嬉しそうじゃないね。負担?」
かほは顔を覗き込み尋ねた。
「嬉しくないわけないじゃん!!
ただね、やはり離婚するって大変なことだから
手放しに自分の感情だけで喜ぶことじゃないでしょ?」
いかにもよしきらしい返事だとかほは思った。
常に冷静で客観的な物の見方ができる…
13も年上のかほよりもずっと大人びた所があり
話すことはいつも理路整然としていて
取り乱すことはまずなかった。
かほは返す言葉が見つからなかった…
期待したような返事はなかったが
ひとまずここで、きちんと報告できたことに
かほの気持ちは穏やかで…
これから堂々と恋愛ができる喜びを噛み締めていた。