次の日・・・・・
2000年12月25日のこと。
かほ、いや【佳奈子】は家から車で2分もあれば着く駅で、夫の到着を待っていた。
結婚して15年・・・
まさかこんな形で終わりが来るとは
別居に踏み切った時には考えもしなかった。
まもなく、電車から降り立ち、こちらへ向かって歩いて来る夫の姿が、視界の先に映った。
久しぶりに見る夫の顔はやつれており、心なしか痩せたようだった。
夫は佳奈子の車に乗り込んだ。
向かうのは、市役所である。
二人は軽く挨拶をした程度で、5分もすると市役所に着いた。
佳奈子は、車から降り建物の中へと消えていく、夫の後ろ姿を見送った。
佳奈子の心に後悔はひとつもなかった。
《夫婦なんてあっけないものだな…》
車の窓から外をぼんやり見つめながら
佳奈子は15年の歳月の出来事を思い返していた。
やがて、市役所から夫が出てきて、車に戻ると
「今までありがとな」
静かな声で夫は言った。
紙きれ一枚のこと…
しかし、その重みと責任を考えた時…
また、改めて自由になることを実感した時…
何故か佳奈子は武者震いがした。