慌てたかほは、ドギマギしながら答えた。


「あ、あの…あのさ、いや…

誕生日だなって…

里沙がね、ハム太郎さんに持ってってって、あんまり言うから…」



《ハム太郎さん》


以前娘がハムスターを二匹もらってきた、とよしきに話したことがあった。


ハムスターはすぐ繁殖するし、相性が悪いと喧嘩して傷つけあうから、飼うなら別々の籠にした方がいい…

そう言って、使わなくなった籠を貰った。



それ以来、娘の里沙は会ったこともないよしきを

《ハム太郎さん》と呼び、時々可愛い手紙を書いていた。



かほは恥ずかしさの余り

娘にかこつけて、ココへ来た理由をしどろもどろ話した。



必死に言い訳を続けるかほに、よしきは苦笑いをした。


「なんか、まだ話足りないみたいだね。

そんなとこいないで、入ったら?」



よしきの言葉にかほは舞い上がった。


「えっ?いいの?!」


嬉しさを隠しきれないかほを、よしきは玄関を開けて招いた。



あの時と何一つ変わらない部屋の雰囲気…


よしきの笑顔・・・


よしきの匂い・・・



まるで夢を見ているようだった。



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