車をいつもの場所に止めると
かほはなるべく足音を立てないように
よしきの部屋の前まで歩いた。
足元が震えてどこをどう歩いているのか、感覚がない…
心臓はドキドキ大きな音を立て、手には汗が滲む…
《どうか家にいませんように…》
かほの心の中は複雑だった。
会いたい気持ちと、顔を合わせるのが怖い気持ちとが交錯していた。
部屋の明かりはついている。
《いるんだ…》
ノックをしたら出てきてくれるだろうか?
それとも、私が来たと知ったら開けてくれないかも……
結局ノックする勇気が出ないまま
かほは玄関のノブに持っていた紙袋をぶら下げた。
後ろ髪を引かれる思いで、その場を去ろうとしたその時……
玄関脇の小さな窓から、よしきが顔を出した。
「か・ほ・・ちゃん?
何してんの?」