車の中でチェンジするはずの母親の顔…
それが、朝になってしまったという焦りから
慌てて出て行くかほに、よしきは怒ったと勘違いしたようだ。
「かほちゃん!待って!
怒らないで!」
後を追うように声を掛た。
「怒ってないから」
かほは無表情に答えた。
かほはただ早く帰らなくては・・・
それだけを考え、すっかり母親に戻って家路を急いだ。
よしきは、かほが怒って帰ってしまったと思い込み
何度も心配してメールで謝りを入れてきた。
けれどもかほはそんなことを気にしている余裕がなかった。
一刻も早くかえらなければ…ただそれだけだった。
その時のよしきの変化には気付かずに
何も疑わないまま…
自分を守る
子供を守る
そちらを優先させて、その時には
よしきのことは頭から消えていたのだから…。
これがすべての始まりになることなど
この時のかほは知る由もなかった。
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