幸せを満喫しているかのようなかほだったが

実はひそかに、よしきに対する疑惑を持っていた。



よしきの留守中、合い鍵で家に入る。

部屋の隅に無造作に置かれている郵便物の中に

女性向けの通販雑誌が混ざっているのを見たことがあった。


裏を向いているので宛名はわからない。



《彼女とここに住んでいたんだろうな…》



最初にここを訪れた時、引っ越したばかりだと言ったはずだが

絨毯についた家具のへこみ

積もった埃…

一目見て、引っ越したばかりではないと悟った。


けれどそんなことは、かほにとってどうでもいいことだった。


彼女と住んでいたことを何故隠して

引っ越したなどと言わなければならないのか?

よしきの真意を測りかねていた。



ある日かほは

恐る恐るその郵便物を表にした…




そこには



「山下 葵様」



よしきの苗字で元カノの名前が記してあった…



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