Tears〜硝子細工の天使〜


別居している…

そのことを告げた日から

もう帰らなければならない理由はなかった。


しかし、本当はそうではない。

夕方になれば

子供の待つ家に帰らなければならない。

そして、子供が寝静まった夜に

またひっそり出てくる…


別居して一人なら

時間など関係ないはずだったが

かほはいつも色々な理由をつけて帰って行った。


《今日は友達と約束してる》

《実家に行くから…》

《旦那からいつ家に電話があるかわからない。
いないと責められるから…》


その度に悲しい嘘をついた。




そんなことが続けば

おかしいと気付かないわけがない…

よしきは、子供がいると推測したのだろう。



《いつか言わなければ…》


そう思っても

かほには勇気がなかった。

自信がなかった…





すると電話の相手が

"子供がいたらどうするんだ?"

とでも聞いたのだろう…



よしきはあっさりと答えた。