約束の時間。
よしきの車の後に着いて行く。
周りの景色にキョロキョロしながら
《帰り道、覚えておかなきゃ…》
そんな事を考えていると
まもなく川添いにある
小さなアパートに着いた。
一人暮らしの男の家に入る…
初めての経験に
かほはそわそわと落ち着きがなかった。
部屋に入るとすぐにキッチンに立ち
慣れた手付きで下ごしらえをしたハンバーグをフライパンで焼く。
味噌汁を作り、ひじきを温め直した。
横からよしきが
「何か手伝うことはない?」
と聞いてきた。
毎日自分でお弁当を作っているというよしきは
キッチンに立つのは平気だった。
「いいから、座ってて」
かほは照れながら
よしきをテレビの前へと追い返した。
一緒にするのも楽しいが
やはり今日だけは
全部自分でやりたかったのだ。
大好きな人の為に…