佳奈子は数カ月前から夫と別居していた。
離婚に向けてではなく、あくまでもやり直す為だったが
夫婦の溝は深まるばかりだった。
――新しい年が始まった2000年1月――
悩みに悩んだ末
里美から入手した情報を頼りに、震える手で携帯を握りしめ
例の出会い系サイトに登録をした。
《メル友位いたっていいよね》
都合のよい言い訳を自分に言い聞かせていた。
次の日恐る恐るサイトを覗くと
メッセージが一杯届いていて驚いた。
サイト内のメールBOXは満タンで
これ以上は新しいメールが受け取れないほどだった。
佳奈子は夢中で読み漁り
アドレスを載せてきた人の中から何人か選び
まずはそれをせっせとメモに書き留めた。
わからなくならないよう、年齢や住まいなど、大まかなことも付け足して…
その中の一人が
《よしき》だった…
偶然入った一つのメッセージが
佳奈子の運命を変えることになるとは
この時は予想もしなかった。
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