そう、その時もそんな季節だった。


確か、2005年の4月10日―


娘の里沙は高校生になった。

先日入学式を終え、お弁当生活が始まったその日…

同じように母子家庭で、うつで通院している由利子と

二人共に、体調がよかったので、街に出掛けた。


パステルカラーに彩られた街に、気分が高揚し

二人は久しぶりに買い物を楽しんだ。


洋服に靴、化粧品・・・・

気がつくと財布の中身はからっぽだった。


由利子が二軒先の角にある銀行へ、お金を下ろしに行っている間

佳奈子は、百貨店の入口にある椅子に座って、ホッと一息ついていた。



煩い音楽や人混みに気を取られ

携帯の音などに気付く余裕もなかったので

佳奈子は由利を待つ間に、鞄から携帯を取り出し

何か連絡がなかったか確かめてみた。



里沙からの着信が二件と、祥子からのメールが一件入っていた。



祥子のメールを開けてみると…


信じられないことが書いてあった。



何度も何度も確認するかのように、活字を凝視する・・・・



胸の鼓動は早まり、歩き疲れた事も手伝って

頭がジンジンと痺れるような感覚に襲われた。