春の雨に、桜の花も殆ど散りかけている。


佳奈子はこの桜の季節が大好きだ。


学生時代はもちろん

今までの仕事も、四月からが新たな一年のスタートになる節目のこの季節…



桜の花は、一瞬に花を咲かせるが散るのも早い。

そのはかなく散りゆく姿は美しく

それでもまた、次の年には、満開の花を咲かす…


その美しさとたくましさが好きなのだ。



保育園の園庭の隅に散った桜の花びらを

子供達と集め、家に持ち帰り

ブランデーグラスに注いだ水の上に

花びらを全面に浮かし

レースペーパーの上にそのブランデーグラスを乗せた写真を

よしきに写メで送ったことを思い出す…




夜中に車を飛ばし、夜桜を見に行った時…


人気のない公園で空を仰ぎ

散りゆく花びらを、ただ手を繋ぎ

黙ってずっと見ていた…



電灯の光を浴びて

それはまるで雪のように白く輝き

二人の頭や肩に舞い落ちる・・・・


そんなロマンチックなシチュエーションの中

そっと唇を合わせたあの日のことが鮮明に思い出される。




この季節にはそんな思い出がいっぱい詰まっているのだ。