秀人の悪い癖だった。


その時の思いつきで、調子のいいことを言って喜ばせてみるものの

実際土壇場にきて、無理だと判断すると

いとも簡単に約束を撤回する。


期待を裏切られることも何度かあった。



また、社長にものすごく忠誠を尽くし

一緒にいても、社長から個人的な頼みを受けると

あたかも一人ですから行きますよ、というようにカッコつけ

佳奈子を犠牲にし、出掛けて行ったりすることも多かった。


「休みで彼女のところにいるから、今日は無理ですって、何で言えないの?

しかも仕事じゃないのに…」


「これも仕事のうちなんだよ。

今から恩を売っておかないとね!

将来かなちが幸せになるためでもあるんだから、文句言っちゃダメ」

そういっては、社長の小間使いのように

佳奈子の家からさっさと出て行くのだった。



佳奈子はいつも秀人のそんなゴマスリを不愉快に思っていた。


《うまく利用されてるだけじゃん!》


《ただのイエスマンなだけじゃん!》



佳奈子は段々と秀人への気持ちが冷めて行くのを感じていた。