しかし……実は佳奈子は、その提案には多少の躊躇があった。
何故かというと…
心のどこかで、よしきと再会できるのではないかという
微かな期待もまだ捨てきれなかったからだ。
佳奈子の家から、秀人の会社まで、高速を乗り換えて1時間半、料金は一日三千円にはなる。
朝も5時には起きて、遅くとも6時には出なくてはならない。
それが、多少の難点だった。
佳奈子の気乗りがしないまま、秀人は自分の荷物をどんどん持ち込み
テレビと洗濯機を大きいものに買い替え、着々と準備が進んで行く……。
ところが・・・
最初は乗り気だった秀人は、金銭的なことを考えると、急に不安になったようだ。
「ごめん・・・・
どう考えても、一月交通費にかかるのはキツいよね」
と、言い躊躇し始めた。
子供達からも、いいんじゃない?
と了解を得、よしきのことは淡い夢として胸の奥にしまい
秀人との生活と楽しみにしていた佳奈子にとっては
とてもガッカリする言葉だった。
自分から言い出しておいて、やっぱりやめよう?
何考えてるの?
秀人の身勝手さに腹が立った。