二人は決して人前ではベタベタとはしなかった。
佳奈子はなるべく、他の人と話すように心掛け
秀人は、いつもそれを遠くから笑って見守り
佳奈子がメンバーの皆に気に入って貰えることが、何より嬉しく思っていたようだ。
帰り道には必ず
「今日もありがとね。
かなちは、僕の自慢の彼女だよ」
と満足げに言う。
佳奈子はこうして、周りからも認めてもらえる二人の関係をずっと信じていたし
今までの苦しみは、この幸せに辿り着くまでの
避けて通れない道だったのではないかとさえ思えた。
そして、いつしか、もし結婚するなら
ヨットの上で結婚式をしたいね
と二人で夢を語るようにもなっていた。

