《カッコつけるなんて私らしくないよね…》


そう思うが早く、かほは階段を駆け降り、走ってよしきの元へと急いだ。


よしきに気付いてもらえるよう、公園を横切る…


履いているミュールが公園の土に取られて思うように前へ進めない。


もどかしさに苛々しながらも

後少しで運転席の窓から、かほの姿が見える所まで来た時……!





残酷にも、エンジンをかける音がしたかと思うと

勢いよく車が発進するのが見えた。



「待って!ねぇ、待ってよ!!」


周囲の目など、全く気にせず

かほはよしきに聞こえるよう大声で叫んだ。


ただ、走り去る赤い車の後ろだけを見て、かほは走った。



「待ってよ!

置いてかないで!!」


泣き叫びながら、車の後を追う…





しかし、その声が届かなかったのか…


それともよしきの演出だったのかはわからない。



あっという間に車は見えなくなり

道路の真ん中で、ヒールの折れた靴を片手に

かほは涙でぐしゃぐしゃの顔で

ただ茫然と立ち尽くしていた。





.