約30分後、ワン切りの合図がした。
かほは改めて鏡に全身を写す…
そして顔を覗き込み、化粧のりを確認した。
"アリュール"を纏い、髪に手櫛を入れ、カールを整える。
それから煙草ケース一つ持って、よしきの待つ公園へと向かった。
よしきは公園の脇の道路に車を止め
その中で空を仰ぐような位置にシートを傾け、座っていた。
窓硝子をコンコン…と軽く叩きドアを開けると、よしきはシートを戻した。
その横顔は冷たく
すぐには声を掛けられないようなオーラが伝わってきた。
そのオーラに怖じ気づかないよう、かほは強気で言う。
「ねぇ、別れるって、本気で言ってるの?」
「そんなこと嘘ついてどうする」
相変わらず、冷たい横顔を崩さずよしきは答える。
「私に彼がいるのが気に入らないんでしょ?
優先してもらえなかったからって…
今まで私もどれだけか辛い思いをしたか……
だったら、たった一回のことでキレて別れるなんて、簡単に言わないでよ」
諭すように言ってみた。
「それに最近は、あまりよしきを責めなくなってるでしょ?
彼の存在があるからこそなんだよ?」
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