かほは何と答えればよいのか、わからなかった。
《そんなに嫌ならどうして別れない?》
いつもその疑問が繰り返し頭の中で反芻される。
沈黙が続いた後、よしきは冷静さを少し取り戻した。
「僕は我が儘言わないから…
彼氏と約束してたら、断ってくれていいから。
僕だってアイツがいる時は相手してやれないし…
だから、遠慮しなくていいからね。
彼氏を大切にしてあげて」
かほの気持ちは複雑だった。
《俺も別れるから、かほも別れてくれ》
そうは言ってはくれないんだ…?
《仕方ない》
で片付けてしまえるんだ……?!
結局その程度の気持ちなんだ…
綺麗ごと並べないでよ!
物分かりいいフリしないでよ!
カッコつけないでよ!
そんな言葉が胸の中で煮えたぎるように湧いてくる。
「やだ!私はよしきが好きなんだもん。
彼より好きなんだもん!
言ったでしょ?他の人ができても、よしきが一番好きって。
その気持ちは今も変わらないよ?」
かほにその言葉を言わせたい為の、よしきなりのやり方だと気付いては
またヤラレた…と馬鹿な自分が情けなかった。