それは秀人からの電話だった。
かほは出るに出られず、無視を決め込んだ。
そう、あの時…高速に乗ってた時の反対だ。
だが、よしきと違って秀人はしつこい。
出ないと何度でもかけてくる。
もうすでに3回も立て続けに着信音を鳴らしていた。
今更電源を切ったら、着信に気付いて切ったと疑うだろう。
その間よしきはポーカーフェイスで黙ったまま…。
かほはどうしていいかわからず
ただ音が鳴り止むのを待つしかなかった。
何度掛かってきても、それでもかほは出なかった。
携帯を布団の中かどこかに隠し、音が聞こえないようにしてしまいたい衝動に駆られる……。
よしきと久しぶりに迎えた朝…
幸せに浸っているかほにとって
その音は甘い空気を邪魔する、ただの雑音でしかなかった。
そのうち秀人はようやく諦めたか、電話をよこさなくなった。
よしきがやっと口を開き、おどけたように言う。
「かほちゃんの彼ピーからだったりして!?」
「フフッ、だったらどうするの?」
かほはよしきがどう出るか試すように、わざとふざけて笑った。

