よしきといる時は、文句なく楽しい。
よしきが選ぶ音楽や話題…
そのどれもがかほにとっても心地よく、興味深いもので
こんな幸せの感覚は、やはり捨て難いものがあった。
今ではかなりメジャーになり
若者のカリスマ的存在の倖田來未も
当時はテレビには出演せず、ひっそりとアルバムを出している程度だった。
その倖田來未の音楽を知ったのも、よしきの影響だった。
また、読書が好きなよしきから、本を借りて読むことが多かったが
シドニィ・シェルダンなどは、かほも夢中になった。
童話の本当の言い伝えを残酷に表現し、解説してある本を手にした時
「人魚姫なんか、かほちゃんそっくりだよ」
そう言われ読んでみると
人魚姫が何故王子に選ばれなかったか…
それは口が聞けなかったからではなく
必要以上に愛を求め過ぎた為
それが王子の重荷となり、他の姫を選んだとの解釈で描かれいた。
それを読んだ時、かほはあの頃、よしきがよく
「僕はこれでも精一杯やってるつもりだよ。
これ以上求められても無理だよ」
と言っていたことを思い出し、涙した。

