――時は2004年――
よしきとかほが出会って、丸三年を迎えようとしていた。
片や秀人と初めて過ごすお正月。
秀人の姉に佳奈子を紹介しがてら、泊まりに行った日の帰り道。
多少のUターンラッシュに引っ掛かりはしたが
まずまずスムーズに高速を移動していた、その時…
音楽も流れていない静かな車内に、佳奈子の携帯の着信音が鳴り響いた。
その曲から、よしきだということを佳奈子はすぐに判断した。
だが出るわけにはいかない。
長い間、鳴りやまない音楽に、不思議に思った秀人が言った。
「どうしたの?出ないの?」
佳奈子は、ドギマギしながら答えた。
「ん?うん…いいよ、放っておけば。こんな時間だし…」
そのうち、諦めたかのように、プツリと音楽が止んだ。
秀人が運転していてくれて助かった…
佳奈子はホッと胸を撫で下ろした。
「出なくてよかったの?」
「どうせ大した用じゃないと思うよ。
せっかく二人でいるのに、欝陶しいじゃん?」
佳奈子は、そう言い訳をしながら、携帯の着信履歴を確認し
苗字だけで登録してある、《山下》の文字を消した。