佳奈子の中に、まだ《かほ》が存在していることを感じながらも

認めまいと隅へと追いやって、目を背けてきた。


だが、よしきの声を聞いたとたん

突然《かほ》が地響きを立てて現れ始めた。


すでに秀人のことは頭の中から消えていた。



「もう、掛かってこないって思ってた…」


「誰かいい人でもみつかった?」



そうだ、この瞬間を待っていたのだ。



いつか言おうと心に決めていたセリフ・・・・



自分から、さよならを告げること…。













「……まさか!できるわけないじゃん!」





―――言えなかった…。



佳奈子はそんな自分に物凄く嫌悪感を抱いた。


秀人の顔が浮かんでくる。


今頃眠ってしまっただろうか…

それとも頭痛に苦しんでいるだろうか…?



ちゃんと秀人の存在を明らかにし

《もう二度と会わない》

そう言えなかった自分が情けなく、また恨めしかった。