ある日曜日
娘の里沙は朝早くからバレエの発表会のレッスンに出掛けることとなった。
幸運の女神がやっと微笑んでくれたのか…
チャンスが訪れた。
その日始めて二人は
お日様の下、公園で手を繋いで歩いた。
冬の公園は人気も少なく
二人の足音だけが響き渡り
やけに言葉少ない口元から吐く息が
その透明な空気に白い跡を残していた。
《もっともっと一緒にいたい…》
冷たい空気とは反対に
二人の心の中は熱くなっていた。
ところが…
メール音が鳴り、見てみると
『今○○駅なんだけど、26分に着くから迎えにきてね』
里沙からのメールだった。
《今日は団員さん達も一緒の通し稽古だから、夕方になるって言ったのに…》
かほはガッカリした。
気持ちがどんよりと沈んで行く。
また嘘をつかなければならない・・・・・
「急に用事ができて、実家に行かなきゃいけなくなったの」
何か様子がおかしい…
よしきは気付いていただろう。
その証拠に帰りの車の中、二人の会話は少なく
重苦しい空気が漂っていた。

