答案用紙に名前だけ記入し、後は寝てるだけで入った高校は
三ヶ月で校長直々に頭を下げて、辞めてくれと頼まれ退学…
その後仕事を始めたが、稼いだ給料は、全て父親に没収され、自由になるお金を持てなかった。
しかしそんな中から、どうにか貯金をし
一つ年上の姉に看護学校に通うお金を工面したという…
まるで戦後の日本、貧乏だった頃の日本を象徴するかのような
壮絶なる経験をしてきたにも関わらず
そんな過去を感じさせないほど、秀人は明るく、穏やかな人物だった。
「…苦労したんだね」
それ以外妥当な言葉が見つからない佳奈子がそう言うと
「苦労だなんて思ったことないよ、それが当たり前だったから。
普通を知らんからね…」
いつもそう笑って答える秀人を尊敬すらした。