その日の帰りは、遅くなったせいもあり

駅ではなく、自宅まで送り届けてくれた。


「佳奈子さん、またメールしますから。

今日は疲れただろうから、早く寝て下さいね!」


くしゃくしゃにした笑顔を残し、秀人は帰って行った。




ヨットに行ってから、3日経った水曜日――

秀人からメールが届いた。


『今日は仕事が早く終わったから、今から少し会えませんか?

お茶でも飲みに行きましょう』


佳奈子は快諾した。


初めて二人だけになる……


久しぶりにドキドキと胸がときめいた。



お茶を飲み、二時間位話をした。


時計は10時になろうとしていたその時、里沙から携帯に着信があった。


「ママ、どこにいるの?まだ帰らないの?」


そう言われ、二人は名残惜しく店を出た。


車に乗ると秀人がフロントガラスの端から、夜空を見上げ言った。



「ほら、見て!今日の月、まんまるだよ!

雲もない、すごく綺麗だ。どう?見える?」


助手席からは見にくく、運転席側に体を傾け

秀人のさす指の先に月を見上げた。


「わぁ〜!ホント綺麗…」

うっとりと眺めている佳奈子に

秀人は一瞬のうちに軽くキスをした。



そう…それは

佳奈子の好きなフレンチキスだった。





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