二人が夢中になって話していると、拓也が青ざめた顔で起きてきた。
「気持ちわるい・・・・」
一言言うと、海にゲロを吐いた。
洋服はずぶ濡れで、裸にトランクス一枚の出で立ちだ。
「…寒い!」
という拓也に、秀人は自分の鞄からシャツを取り出し
拓也に着せて背中をずっと摩ってやっていた。
そんな所にも秀人の人柄を感じ
もしかして、ピアスを開けて運命が変わるとは
このことだったのかもしれない…
佳奈子はひとり満足げに、その光景に目を細めた。
ヨットを降りると、今度は食事に招待された。
行きつけの洋風居酒屋で、洒落たメニューが並び、値段もそこそこだ。
社長さんのおごりで、今井さんと秀人
佳奈子に里沙、拓也、奈那
総勢7人で楽しい一時を過ごした。
そんな時ですら、秀人はみんなに気を配り
自分は殆ど食べずに、周りの世話を焼いていた。
ことのほか、人見知りする拓也を気遣い
遠慮がちにしている拓也の皿に色々と乗せては、一生懸命話かけている秀人に
佳奈子は心から感謝の気持ちで一杯になった。