ヨットに案内され、仲間を紹介された。


「こちらがオーナーの浜島さん。僕の会社の社長です。

それから、仲間の今井さん、僕は、滝川秀人です。
今日は楽しんでって下さいね」



気取りのない、なんとも明るく、でも控え目ででしゃばらない…


そんな秀人に好印象を受けた。



よしきの誘いを断った後悔の気持ちは

この海風に乗ってどこかへ消え去っていた。



秀人は気配りがうまく、飽きさせないで、三人を楽しませてくれた。



海を見つめていた顔をふと上げると、秀人が笑顔で、いつも佳奈子を見つめていた。


その笑顔は傷ついた心を癒すかのように温かく

包み込むような優しさをたたえていた。



佳奈子は直感した。


《この人、私を気に入ってる…》


《きっと私、この人に惹かれて行く…》



体験乗船は数時間で終わってしまい

昼にはヨットハーバーへと戻ってきた。



名残り惜しさが佳奈子の胸に広がった。


多分これでこの人と会うこともないんだろうな……


そう思っている時、秀人が笑いながら言った。


「よかったら、来週また乗りに来ませんか?」





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