その頃のかほには、自分の気持ちすら
何が真実かさえも、判断できなくなっていた。
よしきに何を言われても、気休めにしか取れなかった…
よしきのことはもちろん好きだ。
できれば全てを信じたい…
だがあおいの存在があるという事実は
どんな言葉で埋めつくされようと
かほの心に、蜘蛛の巣のように張り巡らされた厄介なもやは
何をもってでも消し去ることはできなかった。
このままでは、自分がダメになっていく…
なんとかこの状態から抜けださなければ……!
「…ねぇ、ピアス開けたんだ!
ほら運命変わるって言うじゃない?
きっとこれでいい人に巡り合うかも」
気持ちとは反対に、精一杯の無理をして、明るく無邪気に振る舞うかほに
「運命が変わるね〜……
かほちゃんはいいよ!
そうやっていつか僕から離れる日が来るんだよな…
今の僕には何もできないのが悔しいよ!」
よしきは拳で床を叩くと、顔を背け、唇を強く噛み締めた。
その姿は、かほの目に
むやみに言葉を掛けられない程、遠い存在に映った。
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