ゴールデンウイークを境に、とかくこの時期は《5月病》という言葉があるように
仕事への意欲も低下し、家を出る時になると
決まって吐き気をもよおすようになっていた。
行かなければ…と焦るほどに体が拒絶反応を起こし、動けない。
玄関に座り込んで、立ち上がれないこともしばしばあった。
だが、この年齢だ。
たまたま若い時、ここで働いていたよしみで拾ってもらった職場…
今更転職しようとしたところで、かほがいくら経験豊富のベテランだろうと
若い新卒を安く使う方が、雇う側も得だ。
ここを辞めたら、生活できなくなる…
意地でも辞められない……!
そんな脅迫観念もかほにはプレッシャーになっていた。
そう、女が社会に出て働くとは、そんな甘いものではないのだ……
男と同じように家族の為に、また生きる為に働く。
そして、家に帰れば家事が待っている。
そればかりか、息子の拓也は、入学したばかりの高校へ行かず、不登校になっていた。