かほが祥子に、電話で泣きながら怒りと悔しさをぶつけていると

よしきからの着信を報せるメロディが流れてきた。


あおいと一緒にいる時は連絡をしてこないはず…

しかし、さっき送ったそっけないメールが気になって掛けてきたのだろう。



一旦祥子との電話を切り、携帯を手にした。



「…はい」


泣いていたことがわかるようにわざと涙声でかほは応答する。


「…なんか気に入らなかったみたいね」


よしきは単刀直入に聞いてきた。

それに促されるように、かほは怒りをぶつけた。



「僕は会いに行くとは一言も言ってないよ?

君が勝手に想像して、当てが外れたからって…

そんなことを言われても…」


いつも我慢をしてきたせいか

この時ばかりは今まで押さえていたものが

津波のようにせきを切って溢れてきた。



黙って聞いていたよしきは、かほの言葉を遮るように


「…わかった、今から行くから!」

と、つっけんどんに言った。


まさか、出てこれるとは思わなかったかほは

予期せぬ言葉に慌てた。


「いいよ…無理しなくても…

なんて言って出てくるの?」


よしきは意地になり


「なんとかする。

行かないと君の気が済まないでしょ?」


冷たく言うと、電話を切った。