よしきがかほをギュッと抱きしめた。
かほもよしきの背中に手を回し、思い切り抱き付いた。
よしきのぬくもりを感じながら、かほはまた泣いた。
よしきがそっと唇を重ねてきた。
溢れる涙を拭うこともせず
かほの閉じられた目尻から耳元へと
涙は線を描くように伝った。
ようやく唇を離すと
かほはハラハラして言った。
「危ないよ、見にきたらどうするの?」
「いいよ、見られたって。
それでアイツから離れてくれるなら、そんな楽なことはないよ」
そう言うと再び唇を重ねた。
「もう行って、私怖い…」
「そうだな…」
やっとよしきは身体を離し、淋しそうに笑った。
そして、また手を取り堤防の階段を上がると
二人は、かほの車の前で立ち止まった。
「かほちゃん、よく考えて。また連絡待ってる」
よしきはかほの目をしっかり見てそう言うと
きびすを返し、手をひらひらと振りながら
アパートへ向かって去って行った。

